コーピングとは│ストレスを抱えにくくする方法

「コーピング」とは、ストレスへの対処行動を意味する言葉です。今回はコーピングの定義、具体的なアプローチ方法や実践する際のコツなどをおつてします。

コーピングとは

人はストレスを感じたとき、無意識のうちにそれが心身に危害を与える恐れがあるかどうかを判断しています。脅威だと判断した場合は、何かしらの対処を行うことでストレスによるダメージを軽減させています。

しかし、タイミングよく、あるいは効果的にストレスに対処できないと、心身の健康状態を悪化させてしまう場合もあります。

それを防ぐために意識したいのが、ストレスの原因となっている状況や問題に応じてストレスに対処する「コーピング」です

コーピングの定義

「コーピング」とは、人がストレスを感じる出来事に対して行う対処行動のことで、アメリカ人心理学者のリチャード・S・ラザルスによって名付けられました。

ストレスに直面した時に、適切なコーピングを選択することによって、ストレスによって生じる不快な感情の解消や問題の解決に役立てることができます。

コーピングの種類

コーピングにはさまざまな種類がありますが、特に覚えておきたいのが「問題焦点型」「情動焦点型」という2種類のコーピングです。

問題焦点型コーピング

これは、ストレスの要因になっている問題そのものの解決にアプローチすることにより、そこから生じるストレスを消失させるコーピング方法。

専門家に相談して解決方法を探ったり、専門書を読んで解決につながる知識を身につけて実践したりするなど、「問題を解決するための行動」でストレス要因を根本から取り除こうとするアプローチです。

情動焦点型コーピング

これは、自分の気持ちにアプローチするコーピング方法。物事のとらえ方を変えてみる、家族や友人に愚痴を聞いてもらう、好きな音楽を聴いたりおいしいものを食べたりして気分転換するなど、自分の気持ちを楽にする手段を使ってストレスを緩和するアプローチです。

自分がどのようなコーピングを選ぶかは、ストレスの原因や置かれた状況によって異なりますが、個人の性格や考え方によっても影響を受けると言います。

「例えば、物事をすべて理屈で理解し、白黒はっきりつけたいという思いの強い人は、無意識的に問題焦点型のコーピングばかりで対処しようとする可能性が高いかもしれません。

一方、物事を穏便に済ませたい、問題解決にエネルギーをかけたくないという思いの強い人は、情動焦点型のコーピングばかりに意識が向く傾向があるかもしれません」(大美賀さん)

 

効果的なコーピング

人は多くの場合、無意識に問題焦点型や情動焦点型のコーピングからストレスへの対処行動を選択していますが、この2つのコーピングの特性を理解し、意識的に使い分けることによって、より効果的にストレスに対処することができます

例えば、誰かとけんかをして厳しい言葉を投げかけられてイヤな気持ちになった場合、いったん会話をやめて、好きな音楽を聴いて気を紛らわすことは、情動焦点型コーピングの一つです。

 

とはいえ、これだけのコーピングでは、次にその相手と会った際にその時のイヤな気持ちが解消できず、気持ちよく付き合えなくなってしまう可能性があります。

「相手の発言に納得ができない場合には、その思いを伝え、お互いの考えを理解しあっておけば、次にその人と会った時にもイヤな気持ちを引きずらなくて済みます。これが問題焦点型コーピングです。

どちらがより優れているというわけではく、どちらの方法にも利点があります」(大美賀さん)

 

コーピング、シーン別の対処法

ストレスを適切に対処するには、コーピングの問題焦点型と情動焦点型の違いを理解し、使い分けたり、組み合わせたりしていくことが重要です。

それぞれ、どのように対処するか、例としてストレスを感じるケースが多い職場と家庭のシーン別に、問題焦点型と情動焦点型のコーピング方法について説明します。

シーン(1)「職場」:仕事でミスをして上司に叱責される

職場には、対人関係のトラブル、仕事量の多さや対応の難しい仕事など、ストレスを引き起こす要因であふれています。とくに上司と部下の間では、仕事のミスを通じて上司から叱責を受けると、ストレスを感じる人が多いものです。

問題焦点型での対処法

叱責された要因を「自分のスキル不足」と分析してスキルアップを試みる、「上司の指示不足」と分析して「もっと的確な指示をしてほしい」と交渉するなどのアプローチで、ストレスの原因となる問題を根本から解決しようと力を注ぐ対処法です。

情動焦点型での対処法

「失敗は誰にでもあること」と自分に言い聞かせたり、「失敗することで自分の悪い点に気づくことができた」とポジティブに解釈したりして、ストレスを緩和させる対処法です。

音楽を聴いたり、旅行に行ったりと、自分の好きなことをして気分転換をし、感情をケアするのも一つの方法です。

 

シーン(2)「家庭」:子どもの学習面や進路で悩んでいる

子どもの成長を見守ることは、親として必要なことです。しかし、子どもの将来を考えると学習面や進路について不安が生じ、そのことばかりが気になってストレスが募ってしまう人もいます。

問題焦点型での対処法

成績が上がらない子どもに対して、その原因を探して対処します。

例えば、テレビやゲームなどが原因で勉強が疎かになっている場合、勉強する部屋と息抜きをする場所とを分けたり、進学塾に通わせたりするなど、子どもが勉強に集中できる環境、学力を伸ばせる環境を整えることで対処します。

情動焦点型での対処法

例えば、「今は勉強に興味がないんだ、自分もそうだった」と大らかに考えてみたり、子どもの学習のことばかりに意識を向けずに自分の趣味を楽しんで気分転換をしたり、同じ悩みを抱える親と話をして不安を分かち合ったりして、ストレスに対処します。

 

コーピングのポイントと活用法

コーピングをうまく活用するためには、問題焦点型と情動焦点型のどちらかに偏らないようにすること、コーピング・レパートリーを豊富に持つことが重要です。

 

問題焦点型と情動焦点型の使い分け

コーピングが問題焦点型と情動焦点型のどちらかに偏ってしまうと、多様なストレスへの対処が難しくなります。以下、偏ってしまった場合のリスクについて解説します。

問題焦点型に偏った場合

感情のケアを後回しにすることで不快な感情が募ってしまったり、想定した通りに問題が解決しないことでストレスが持続したり、悪化したりしてしまうこともあります。

「問題解決にばかり励んでいても、すぐには問題が解決しないことがありますし、効果的な解決方法が見つからないこともあります。すると不快な感情は解消されず、さらに募ってしまいます。

また、問題解決として行っていたことが逆に不利な状況を招き、対人関係をより深刻化させるなどの新たなトラブルにつながることがあるので、自分の気持ちをケアすることも大切です」(大美賀さん)

情動焦点型に偏った場合

楽観的な考え方で受け流しているうちに、問題が解決しないまま残ってしまったり、いつの間にか気分転換に夢中になり、その対象に依存的になってしまったりすることもあります。

「ストレス要因から距離を置くことばかり考えていると問題解決力が身につかず、ストレス耐性も弱くなってしまいます。

また、気分転換のために飲酒や喫煙を重ねていると健康を害したり、ゲームやギャンブル、買い物などに夢中になると時間やお金を浪費したりすることがあるので注意しましょう」(大美賀さん)

コーピング・レパートリーを豊富に持つ

「コーピング・レパートリー」とは、問題焦点型の“問題解決”、情動焦点型の“情動のケア”というそれぞれの観点から、ストレス解決と解消方法の引き出しを多く持つことです。

一部のコーピング・スタイルに偏りがちな人は、いつも同じ方法でストレスへ対処しようとするため、効果的なコーピングができていない可能性があります

「日頃、問題焦点型コーピングに偏りがちだと感じる人は、意識して情動焦点型コーピングも取り入れてみてください。問題解決方法を探ると同時に、楽観的な考え方や気分転換を取り入れてみるとよいでしょう。

逆に、情動焦点型コーピングに偏りがちだと感じる人は、意識して問題焦点型コーピングを取り入れてみてください。気持ちを楽にすることばかり選択していないかと振り返り、ぜひ問題解決のためにできることを考え、行動してみてください」(大美賀さん)

自分の置かれたストレス状況に気づき、さまざまな対処法を組み合わせて、多角的にストレスにアプローチする「コーピング」。効果的なストレス対処方法を選択しながら、セルフコントロールすることが大切です。

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