知らない世界の扉を開いてくれたり、品格をもたらしてくれたり、本の持つパワーは偉大。でも、本の海は広すぎて……。そこで、迷わず自分を高められるように、本のプロ5人がナビゲート! 知的な女性に近づけるヒントに溢れる本をご紹介。
甲斐みのりさんおすすめ『石井桃子のことば』(中川李枝子、松居 直、松岡享子、若菜晃子ほか)
「ネットやSNSで気軽に情報収集できるのは便利な半面、その向こう側にいる人への想像力の欠如が問題視されてもいます。“世界平和を祈る”などと大そうなことでなくても、まずは自分の日常やすぐ隣にいる人たちが、文化的に暮らせるように意識すること。それが、やがて平和に繋がるのだと、シンプルな言葉の中に学びがありました」
『クマのプーさん』『ピーターラビット』を翻訳し、『ノンちゃん雲に乗る』の作者でもある石井桃子。作品や身近な人たちの談話から、児童文学や人生への考え方を探る。新潮社 1600円
『My Little New York Times』(佐久間裕美子)
「著者が暮らすNYでの日常と社会問題が自然に繋がる形で、フラットに語られます。友人たちとフランクに議論できる環境が羨ましくもあり、議論の深さから自分の浅はかさにも気づかされました。以前は社会問題に冷笑的であることがイケてるとさえ思ってましたが、差別問題や政治にコミットすることは、成長に欠かせない要素と確信」
NY在住20年のライターが、トランプ大統領就任の年に始めた1年間の日記。記述に関連する新聞や雑誌などの記事にとべるQRコード付き。伊藤総研+NUMABOOKS 1850円
『世界のすごいお葬式』(ケイトリン・ドーティ、池田真紀子・訳)
「現代アメリカの葬式ビジネスに疑問を感じ、若くして『その人らしい葬儀をサポートする』葬儀社を営む著者。インドネシアやメキシコ、日本と世界を巡り、各地に伝わる独特の葬儀風習を知っていくエキサイティングなノンフィクション。死者を弔い、悼む風習とそこに表れる死生観は、ここまでに多様なのかと、視点が増えました」
死者と数年暮らしながらミイラにするインドネシアの部族など、葬儀ディレクターが世界で見た弔い方をレポ。先進国の画一的な葬送の在り方や死生観に一石を投じる。新潮社 1700円
『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』(原田まりる)
「実在の哲学者たちが、個性強めのキャラで女子高生の前に登場。たとえば、キルケゴールは奇抜な格好のファッションを例にとって、主体的真理と客観的真理を説明するため、自分が好きな服を着るのか、流行の服を着るのかを問います。そうしたごく身近な選択が“どう生きたいか”という哲学的思考に繋がっていく過程が刺激的です」
実存主義哲学の入門エンタメ小説。バイト帰りの女子高生が、京都の哲学の道でニーチェに出会う。その日を境に、次々と哲学者が現れ、生きる意味を教える。ダイヤモンド社 1400円
『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(小川たまか)
セクハラ、痴漢やレイプなどの性暴力、ジェンダー格差。女性を取り巻く問題とそれに反応する人々に正面から向き合い、Webを中心に発信してきたライターの記録。タバブックス 1600円
「一見、何でもないCMににじみ出る女性蔑視など、日常に潜む様々な差別に対する自分の眼を再検証させられました。とはいっても、背伸びしない率直な言葉で綴られています。なので、炎上した広告や人の言動などがなぜNGで、自分が不快と感じたのか、自分の中で考えがクリアになって、どんどん新たな気づきへと導かれていきます」