上手な怒りの表現方法が知りたい…「怒りの感情のアサーション」とは?

怒りを適切に表現する必要性

怒りは、「期待と現実にズレがあること」を教えてくれるサインです。「怒りの後ろには困りごとが隠れている」と以前の記事でご紹介しました。例えば、部下が締め切りまでにプレゼン資料をまとめてくれると思ったのに、すっかり忘れていた。恋人が自分とのデートを優先してくれると思ったのに、残業がなかなか終わらない。怒りとは、自分や他人に対して「期待」していたのに、現実はズレがあり、困っている状態です。

しかし、いくら期待と現実にずれがあると分かっても、現実的に困りごとがある場合は「問題に対処する」必要が出てきます。困りごとが自分の問題であったり、自分ひとりで解決できる場合なら良いですが、どうしても他人に何かを伝えないといけない場合もあるかと思います。その際、冷静に相手に伝えられず、怒りの感情を伴って伝えてしまうと、人間関係にヒビが入ったり、問題が解決しにくくなることさえあります。

怒りのアサーションとは?

アサーションとは、自分も相手も大切にする表現技法のことです。自分も相手も大事にしつつ、自分の気持ちや考えを、いかにその場にふさわしい方法で表現するかを考えます。また、相手の気持ちもしっかりと考えながら、相手は傷つけないようなコミュニケーション方法を選びます。

怒りの感情自体に良い悪いはありません。しかし、怒りの感情を表出する際は、「好ましい」「好ましくない」方法があります。例えば、怒りを「攻撃」で表現すると人間関係が悪化したり、人を傷つけてしまうことが多いです。また、怒りを「我慢」で表出すると自分の健康に悪影響があります。例えば、心臓などの循環器疾患の危険因子になると言われています。

私たちは「怒り」を感じた後の行動を選んでいる

怒りを人に向ける場合は、立場の強い人から弱い人へと向かう性質があります。例えば、部下が遅刻をした場合はガミガミと怒る係長も、上司である部長が遅刻した場合は、たとえ怒りを感じていたとしても、「疲れているんですか?」と心配した態度を示すかもしれません。

私たちは「怒り」を感じた後の行動を選んでいます。それは無意識かもしれませんし、意識的かもしれません。怒りの後の行動を選べるということは、怒りの表現方法も自分で選択できるということです。

怒りで人の行動を変えることは難しい

怒りを直接的に表現することで、人の行動を変えることは難しいです。人は心から納得したときに自分の行動を変えます。怒りによって、人の行動が一時的に変わることはありますが、心から納得していない場合は続きません。表面的な変化や一時的な変化に止まります。相手のためを思って、長期的な変化を与えたいなら、怒りをそのまま表現することは適切な方法ではありません。

また、怒りは連鎖するという性質があります。誰かに怒りをぶつけると、怒りを受け取った人は別の人に怒りを向けるなど、怒りは連鎖しやすいものです。怒りの連鎖により、職場全体の雰囲気が悪くなることも多く、怒りを人に向けるのはあまり良い方法ではないかと思います。

怒りのアサーションDESC法

それでは、怒りをどのように表現すれば良いのでしょうか? 怒りのアサーションと呼ばれるDESC法をご紹介します。

DESC法は、自分の主張だけでなく、相手の主張も尊重するコミュニケーションです。DESC法は4つのステップから成り立ちます。4つのステップに沿って、自分の考えを伝えるようにしましょう。

1.Describe 客観的に状況を描写する

まずは、第三者から見ても明らかな客観的な状況・事実を伝えます。

2.Explain 自分の気持ちや考えをアイメッセージで伝える

相手に伝えたい気持ちや考えを、困りごとという視点から、自分を主語にしたアイメッセージで伝えます。相手を主語にして、相手にとってほしい行動をそのまま伝えないように注意しましょう。例えば、「早くレポートを仕上げなさい」といったセリフは相手が主語になります。アイメッセージは、「早めにレポートが仕上がると(私が)助かるな」と、自分を主語にしたセリフのことです。

3.Suggest 相手に望む行動や解決策を提案する

ポイントは、具体的かつ実現可能なことです。相手に望む行動や解決策を、なるべく細かく、現実的なものから提案します。

4.Choose 相手に選んでもらう

伝えた解決策を強制せず、いくつかの選択肢から相手に選んでもらったり、他の選択肢はないか問いかけます。最後の決定は相手にしてもらいましょう。

例1)
友人と休日に待ち合わせ。しかし、待ち合わせの時間になっても友人はやってこない…。「どうした?」とLINEを送っても既読スルー。結局、30分ほど遅刻して友人がやってきた。今後も同じようなことが続くのは嫌だな…相手に伝えなくてはいけない…。

D:「待ち合わせは3時だったよね?」

E:「連絡も取れなくて、事故にあったらと(私は)心配だったし、どうしていいか困っていた」

S:「遅れる場合は、LINEでいいから連絡は欲しい」

C:「それか、他に何かアイディアはある?」

例2)
部下が仕事中にスマホばかり見ている。仕事のやり取りかと思いきや、覗いてみると最近できた彼女とLINEしているよう。外線にもなかなか出ないし、仕事にも集中していないように見える。同僚たちも不満に思っており、係全体の雰囲気も悪くなってきた。上司として部下に伝えないといけない…。

D:「最近スマホを見ていることが多いと思うのだけど…」

E:「もしかして何かあったのかなと(私は)心配している。何もないのだとしたら、正直なところ、仕事中にスマホばかり見ているのはあまり印象は感じないかな」

S:「もしも仕事中に緊急の連絡が入るような場合は、係員のみんなにも周知したり協力できると思う」

C:「どうだろう?何か要望とか相談があったら教えてくれると助かる」

DESC法に沿った表現方法をとることで、自分の意見も伝えつつ、相手の意見も引き出す、双方を尊重したコミュニケーションが取りやすくなります。必ずしも全てのケースがDESC法でうまくいくとは限らないかと思います。しかし、DESC法を心掛けるだけでも双方のコミュニケーションは変わってきます。怒りを感じ、相手に伝えないといけない場合、この記事を参考にしてください。

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